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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)140号 判決

原告 小俣寿雄

右代理人弁護士 下光軍二

被告 木村俊夫

右代理人弁護士 平山国弘

同 飯野仁

主文

被告は原告に対し金十万八千円(各四千五百円の割賦金の合計額)及び昭和三十一年八月一日を第一回として順次昭和三十三年七月一日まで各月一日(各割賦金の弁済期の翌日)から各金四千五百の割賦金の完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は五分し、その一を被告その四を原告の負担とする。

第一項は仮に執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

原告が請求原因として主張する事実及び被告について被告主張のとおり和議が成立したことは当事者間に争いがないところ、右事実によれば原告の債権は和議法第四十一条にいわゆる和議債権であるから、和議の成立によつて和議条件のとおり変更されることは和議法第五十七条、破産法第三百二十六条の規定により明らかである。

原告は和議条件のいかんにかかわらず、全額弁済を受ける特約があつたと主張するので考えるに、仮に右のごとき特約が和議成立前にあつたとしても、和議が成立したときは和議債権はすべて和議法の定めるところにより和議条件のとおり変更されるものと解すべきであり、その意味で右のごとき特約はその効力を有しないし、右のごとき特約が和議成立後になされたとしてもかかる特約は和議債権はすべて平等公平に取扱おうとする前示和議法の精神に反するものであつて、一部の和議債権者にのみ特別の利益を与えようとするかかる特約は無効といわざるを得ない。従つて、原告の債権も前示和議条件の通り変更され、被告は元金百六十二万円の三分の一である五十四万円を昭和三十一年七月(和議成立の日である昭和三十年六月十日から一ヶ年の据置期間の満了した昭和三十一年六月十日の翌月)を第一回とし、向う十ヶ年間に毎月末日限りその百二十分の一づつ及び、右弁済期以後年五分の割合による遅延損害金(和議条件第四項の利息は遅延損害金の趣旨に解する)を支払う義務があるにすぎない(和議開始までに生じた遅延損害金もその三分の一に免除されるのがこれは和議条件第四項により右元金債務を完済したときは免除されるからしばらく、措くことにする)ところ本件口頭弁論終結当時弁済期の到来している割賦金である四千五百円づつについて昭和三十一年八月を第一回目として順次昭和三十三年七月一日まで各月の一日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。しかして前記和議条件に従つた弁済について被告は争つていないから、未だ弁済期の到来していない将来の給付を命ずる必要がない。よつて原告の本訴請求は主文第一項の限度において認容し、その余を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡松行雄)

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